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ROOTSインタビュー #1 

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長く経営してきたユースホステルをやめ、楽器を手に。
病を乗り越え、青春時代に憧れた音楽を今サックスで奏でる。


̶̶̶̶̶     板橋 誠さん (80代)

※インタビュー冒頭、エルビス・プレスリーの『ラブ・ミー・テンダー』を演奏する板橋さん​

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ー太くて良い音を聞かせていただきましたが、サックスを始めてどれくらいになりますか?

 

高校の時は私、トランペットをやっていたんです。 これまた不良少年時代でね(笑)。私は元々農家の長男で、野菜と米を作って市場に出荷をしていたんです。その上で、私はもう少し世の中を広く見たいと思いましてね、農家をやりながらユースホステルってのを始めたんです。

元々、ユースホステルは外国から来たものでね、ドイツの小学校の先生が始めたそうです。子どもたちをなんとか将来役に立たせたい、そういうような精神もあったみたいで、私、このストーリーが好きなんですよ。​

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ユースホステルは約40年間やっていたんですけど、その途中で震災にあったんですよね。その時に私が音楽が好きだっていうことを東京の友人が知っていて、『旅情』という洋画でかかる『サマー・タイム・イン・ベニス』っていう曲を送ってくれたんです。それがサックスの曲で、うっとりしてね。ユースホステルの皆を送り出した後、朝食の時だったんですけどね、女房が隣にいたんですけど、その曲を流しながら聞いてたらなんか涙出ちゃってね。

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でも、毎年行っている人間ドッグで、胃癌が見つかっちゃってね。大したことないと思ってたんですが、回を重ねるごとに「また癌が大きくなってますよ」って言われて、 結局、手術する羽目になりました。そこでサックスは辞めちゃって、更に今度はコロナ禍で、合計7年ぐらい辞めてましたかね……。

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医療関係の雑誌とかお医者さんの話を聞いてるうちに、呼吸器系を丈夫にするのが良いということがわかった。私みたいに高齢になると脳が衰えるんで、お医者さんからは「脳の活性化が大事。板橋さんは今どんなことをやってるの?」と質問がありまして、音楽に興味があることを話したら「それ良いかもしれないね!」って言われてね。

楽譜を見て、脳からの指示で指を動かして、息を吸って、楽器を吹く……。

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吹く時は腹式呼吸ですから内臓も鍛えられるって聞きました。そしたら、サックスと結びつくところがあって、続けた方がいいんだなと思いましてね(笑)。最近は認知症に効果があるといわれている音楽療法っていうのがあるらしいんですね。もし続くんであれば続けた方がいいよって先生からも言われまして、そういうことでまたサックスを再開して続けていますね。

さっき『ラブ・ミー・テンダー』を演奏しましたけど、覚えてくると自分の気持ちを表現したいところがあるんですよ。​​​​​​​​

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ー音楽や映画がお好きとのことですが、印象に残っている作品はありますか?

結構ありますよ。まず『慕情』。『グレンミラー物語』や『ひまわり』、『愛情物語』ってのもありました。原曲がショパンのノクターンでしたね。

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ーお好きな映画の曲などが吹けるようになって、どんなお気持ちですか?

 

私、今年86歳になるんですよ。この年になっても自分でこういうことができるんだな、まだ元気になれるんじゃないかなって思いますね。

ー板橋さんと同じくらいの年代の方も、楽器をやってみたいなと思ったらできると背中を押されますね。

ええ、そういうことを伝えたいですね。 ジョギング、ゲートボール、ゴルフ、囲碁や将棋、マージャンなどをやっておられる方も多いけれど、まだ何にも出会ってない方にサックスの良さをお伝えできればいいかなとは思いますね。

ーすごい励みになると思います。

 

いや、地元では、あれは特別な人間だって言われてます(笑)。

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ー羨望の目もあると思いますよ。

 

そうですかね(笑)。初めの頃は自宅で練習していると、女房に「雑音で耳障り」って言われていたんです(笑)。でも、先月のROOTSの発表会後、 意気揚々と歩いて帰って、ニコニコしながら女房の前で『ラブ・ミー・テンダー』を演奏したんです。そしたら、「え!お父さんどうしたの、ちゃんとメロディーになってる!」って初めて言われて。そんなことで、女房までも元気づけられました。

ー素晴らしい!本当に良いお話聞かせていただきました。

そうですか(笑)。いや、もう恥ずかしい話です。

ーもっともっと素敵な演奏をいろんな方に聞いていただけると思うので、ぜひこれからも続けてくださいね。

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そうですか。そうやってお話を聞いてもらえて、私が元気になりました。ありがとう。

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(インタビュアー:奥口文結、文:林宏樹、写真:門山夏子)

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